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市民セミナー報告書より

春植物との出会い

 春霞の六甲山の中腹に山桜、繁茂するアセビも満開です。
午前中の定例活動に7名が集まり、春植物や樹木の新芽の観察を行いました。今期初めての自然保護センターは13℃と温かでした。5名は二つ池周辺の環境調査と植生観察を行
い、春の到来を確かめました。2名は散策路の植生を観察し、8℃という日陰の寒さに閉口しながら、アカバナとシロバナの両方のショウジョウバカマが観察でき喜んでいました。

「時計屋になりたかった」という大西さん

 お父さんは時計業傍ら、世界初のヘリコプターを試作されたとのこと、ご自分も高校時代に国産初のプラネタリウムを製作されています。開発した耐熱シートが宇宙から生還した「ハヤブサ」に装備されていたなど、天文や精密工学に関わられた技術開発のエピソードは一杯です。
 理事・関西支部長を務められるスペースガード協会は、地球軌道と交差する特異小惑星が地球に接近するのを常時監視している国際的な団体です。講演では脱線話も期待します。

六甲山からは星が見やすい

 今回は六甲山にちなむ話を考えていただき、話題の順序として、1.小惑星「六甲山」、2.六甲山と自宅、3.土橋断層、4.国宝銅鐸・銅矛、5.六甲山からの見る星、6.神戸空港からの六甲山、7.パノラマ写真の作り方という7つを用意していただきました。
 まず、小惑星に「六甲山」と「高砂」を命名した経緯と、スペースガード協会の成り立ちや活動ぶりを紹介されました。続いて、六甲山麓の鶴甲に住まわれて、馴染んでおられ
る六甲山の話に進みました。鶴甲付近の大月断層、発掘された銅鐸、油こぶしの登山など、スライドを交え話されました。
 六甲山の南麓からカノープスが見られる話には、参加者の天文ファンも驚いていました。別名南極老人星と呼ばれ、目にすると長生きできるといわれる星で、六甲山は星の観察に最適とのことです。
 休憩後はパノラマ写真の作り方の解説です。5mのパノラマ写真を2点持参されて、コンパスでパノラマ写真をつなぐ方法も実演されました。

頭上遥かな「六甲山」に視点を高めた

 平成23年度初の市民セミナーは、銀河系の片隅の太陽系のメインベルトにある小惑星「六甲山」を話題にしました。日常生活では目先や足下のことに目を奪われがちです。時には大きく高い視点をもつことが必要です。生き生き活動される大西さんに大きな刺激を与えていただきました。

講演の内容

講演の挨拶(大西 道一さん)

 日本スペースガード協会理事として活動しています。天文や写真工学が主領域ですが、六甲山麓に住み六甲山に親しみを持つ者として、天体と六甲山の関わりについてお話しします。また、パノラマ写真の作り方の解説や実演もします。

1.小惑星「六甲山」の命名と現在の位置

■Deep Impactを防ぐ

 小惑星が地球に落ちて恐竜が絶滅したが、日本スペースガード協会では、この種の災害を防ぐ目的で地球への衝突可能性のある小天体の観測を行っている。岡山県美星町の観測所では6人の観測員が毎晩観測している。関西支部では公開講演会、茶話会など啓蒙活動をしている。

■小惑星「六甲山」は三ノ宮の喫茶店で命名した

 公開講演会は日本最高峰の研究者を演者に招く。2009年5月に世界的に有名な彗星・小惑
星観測者・関 努さんの講演を行った。講演後、三ノ宮の喫茶店で話をしていて、小惑星2つに命
名の打診があった。私は高砂と六甲山を提案して、採用された。
 58185が六甲山の登録番号で、前後から読んでも同じである空き番号をみつけて、それを指
定し実現した。IAU国際天文学連合の登録証には登録番号とともに六甲山の紹介が載っている。

■「六甲山」は今どこに?

 木星と火星の間、火星寄りを周回しており、現在の位置は地球とともに図の左側にあって比較的近い距離にある。

2.六甲山の大型パノラマ写真の撮影

■つなぎ目がぴったり合うパノラマ写真

 私のパノラマ作成法は隅々までちゃんと繋がる。従来はレンズ収差でずれて当然という考えで、目立たない場所を選んで繋いでいたが、間違いである。

 1947年、中学時代に奈良の古墳を写し回り、この頃、繋ぐ原理を発見した。その後、図学や写
真を研究し計算法も完成し、論文で発表した。デジカメ上でつなげる方法は特許でおさえた。

■原理がわかればつなぎは簡単

 同じ場所で角度をずらせて撮った写真は1つの「共有直線」で接していて、この直線で接合する
とずれない。コンパスを使うと簡単に共有直線が割り出せる。その手順は配布文献を見ていただきたい。注意点は、①写真の光学中心を割り出す。デジカメではフレームの中心と思えばよい。銀塩写真ではフィルム面四隅に穴を開け、穴の対角線で中心を求める。②接合する写真の中で特徴ある共通箇所を見つける。③コンパスで描く円の重なり部の長さCDを画面上下の半分程
度にする。

■ひと工夫で美しいパノラマが作れる

 ①横位置撮影では、横に繋いで伸ばすと解像度が悪くなる。縦位置で枚数を多く撮影し、余分な「空」はカットする。②拡大した時、望遠レンズは解像度がよくなる。③山頂や麓からのパノラマ
では全体が湾曲する。水平線を真中にしてカメラを回転すると反らない。④近景が視差で合わなくなるのを防ぐには、レンズ中心で回転する。

3.六甲山上からの星の見どころ

■六甲山から見るカノープスの魅力

 神戸では大都市ながらカノープスという珍しい星が見える。全天でシリウスの次に明るい星で、
真南の水平線ぎりぎりの位置に出るので限られた場所、限られた季節にしか見えない。鶴甲で見えるので、高い六甲山ならもっとよく見えるはずだ。
 カノープスは古来、七福神の中の寿老人として神格化され、本家の中国では南極老人星という。これを見ると長生きすると言われている。

■神戸市街地でカノープスを見た

 2005年10月21日3時30分頃、脇浜の神鋼病院で水平線近くに1.5等星くらいの明るさで見えた。神戸市街地で肉眼で見えたのは珍しい。今日4月16日は夕方に出てくるはずだが、
明るくて見えない。来年まで待たないといけない。

■六甲山で星をみよう

 六甲山は大都会の山だが、星や彗星もよく見え。人口スキー場の駐車場は南に森があるので市街地の灯が隠されて、北側の星はよく見える。
 カノープスは南側で、神戸空港のあたりに見える。自然保護センターからも見えるはずだ。

質疑応答

パノラマを繋ぐ機材はどんなもの?

コンパスと定規があればできる。精度をよくするならコンピュータで計算させる。

カノープスは夏場はみえないの?

オリオン座などと同様に典型的な冬の星で、夏は太陽の後ろにある。10月から3月まではみえる。

まとめ(大西さん)

今度は自分で撮った写真を持ってきて自分でパノラマを作ってみましょう。話を聞いたあとは自
分で手を動かすと理解が深まります。

事務局から

 小惑星に「六甲山」と命名された大西さんの六甲山への愛着と、スペースガードの活動や中学時代に既にズレのないパノラマ接合技術を着想されたパイオニア精神に感銘した。われわれも六甲山への愛着とパイオニア精神を大切にしたい。