第68回 再度山大龍寺の今昔物語
神戸市は海があって山がある、大都会でこれほど楽しめるところは珍しい。再度山大龍寺付近は新しい町神戸の奥にあり、1200年以上の歴史を持っている憩いの地域でもある。 真言宗総本山東寺派の別格本山大龍寺の歴史や沿革、縁起などをご紹介いただくとともに、再度山の自然や環境などの魅力や生活ぶりなど、いろいろなお話をしていただきます。
| 開催日時 | 2008年11月15日(土) 13:00 |
|---|---|
| 会場 | 六甲山自然保護センター |
| 講師 | 井上 有惠(別格本山再度山大龍寺 副住職) |
| 詳細 | 案内チラシPDF 報告書抜粋PDF |
紅葉が色づきはじめた六甲山
11月中旬の六甲山は、表六甲ドライブウェイから緑の中に黄葉や紅葉が目につくようになっています。山上は寒くはなく、晴れたり曇ったりの天候で、記念碑台に多くの人がハイキングで訪れていました。自然保護センターは11月末で冬季休館しますので、シーズン最後の賑わいの様子でした。
皆に親しまれている井上さん
講師の大龍寺副住職の井上宥惠さんは、愛娘の裕子さんとご一緒でした。檀家の方も数人ご出席され、親しみ易い雰囲気になりました。住職の井上仁性さんの娘さんとご結婚された経緯をうかがうと、「お寺が先だったか?娘さんが先だったか?」と言葉を濁されました。
長い伝統のある大龍寺の57代目として、仏像や秘伝を守られていますが、誰にでも気さくな態度で自然体の接し方に惹きこまれます。
1200年の歴史が身近になった
神護景雲2年(西暦768年)に和気清麻呂公が寺塔建立の霊地を求めた際、僧道鏡の刺客に襲われたところを、大龍の出現で助かったというのが創建と寺名の由来です。弘法大師空海が入唐前に祈願され、帰朝後に秘法を勤修されて、「再度山」と呼ばれるようになりました。
海と山との交易の場所でもあった修法ヶ原(しおがはら)に因む話で、1000年前にタイムスリップしました。今も残る原生林やシイの大木、外来種も含む様々な動物との共生、上下水道もない自然の中で生活される様子をうかがいました。神戸市内であって、観光地にはない静寂の世界が息づいていると印象づけられました。
井上副住職は仏教教誨師としてもご活躍です。講演の終盤は「健康に過ごす4つのこと」「仏の心」「無財の七施」など、心が洗われる説話もしていただきました。
もっと六甲の歴史を訪ねてみよう
1200年の歴史・文化と自然が生き続けていることが実感できました。便利な楽しみを追いかけがちな日常ですが、少し足を延ばせば懐かしさが一杯の世界に巡り合うことができます。「宗教心とは別に、気軽にお立ち寄りください」という井上副住職のお言葉を受けて、六甲山の歴史・文化や自然を訪ねたいものです。
講演内容
講演の挨拶(井上さん)
大龍寺の赤い山門を知っている方はおられますか。門の近くには「六甲山のマザーツリー・ベスト20」にも選ばれた大きなシイの木があります。大龍寺にお越しの際はぜひ見ていただけたらと思います。
1.大龍寺の歴史と文化
■再度山
六甲山地の中央に海抜470mの再度山がある。神戸の街から再度山ドライブウェイを登り、46番目のカーブで大龍寺の赤い山門が出てくる。再度山ドライブウェイは昭和10年に開通した。ドライブウェイができる前は、修法ヶ原へと通る「再度越え」の御大師道しかなかった。修法ヶ原は山の幸と海の幸を交換した場所で、一般には「塩」に由来して「しおがはら」と呼ばれるが、我々は空海が修法に励んだことに由来する「しゅほうがはら」と呼ぶ。
■龍が降りた霊験あらたかな地に建つ
768年、48代称徳天皇の詔で全国各地に新しいお寺を建てることになった。使者である和気清麻呂が摂津の国で寺院を建てる場所を求めて再度山まで来られた。小川で水を飲んでいたとき、敵対していた弓削道鏡の刺客に襲われた。そのとき天が曇り、大きな蛇が降りてきた。恐ろしい眼つきと耳まで裂けた口、髭に角が生えているという蛇で、驚いた刺客は一目散に逃げていった。
霊験を感じた和気清麻呂は大きな蛇(龍)に助けられたことを後世に残そうと大龍寺を建てた。
大変古い歴史を持っているお寺で、神戸の街では珍しい貴重な存在だと思う。
■空海がふたたび訪れたから「再度山」
大龍寺が建ってから約50年後、中国へ向かう弘法大師空海が祈願に来た。空海は長安の青龍寺で、恵果和上から真言の教えを受けた。教えを会得した後、空海は日本で教えを広めるべく、たまたま来ていた遣唐使船に乗って日本に帰った。次に遣唐使船が中国に渡ったのは30年後。空海がそのとき乗っていなければ日本の歴史は変わっただろう。空海は都への途上、大龍寺に祈願成就の感謝のために来られた。空海が再び来られたということで「再度山」と呼ばれるようになった。
2.自然と共存する大龍寺
■自然に生かされている
大龍寺は1200年の歴史の重みが静かに流れる、自然の中のお寺。寺にはシイの木の原生林がある。再度山は明治30年頃にはハゲ山で、植林をして現在の姿になった。北斜面にあるマツはすべて植林されたもの。最近はマツクイムシがマツを枯らしてしのびない。
私が神戸に来た25年前、掃除のおじいさんが「マツタケが捨てるほど採れた」と言っていた。今は手入れをしないからマツタケが生えないらしい。六甲山地にいろいろな木々があるのは植林のお陰。みなさんの尽力があってのことだと思う。
■再度山の再生を願う
寺で生活しているとたくさんの動物と知り合う。イノシシをはじめ、サル、キツネ、タヌキ、イタチ、リス、ウサギがでてくる。最近ではアライグマ6頭が、家の下で冬眠している。捨てられる子ネコも多い。血統書付のような立派な子ネコもたくさん見る。人間というのは勝手なものだと思う。終いまで飼ってやってほしい。
お寺は自然動物園でもあり、いろんな時間帯で見られる動物を楽しんでもらいたい。動物がいなくなると山自体も汚染されるのだろうと思う。動物との関係をいつまでも大切にしたい。
3.伝えていきたいこと
■大龍寺、再度山の見所
本尊(重要文化財):1200年以上前の行基の作と伝えられる。兵庫県で一番古い仏で、樹齢800年のヒノキの一木作り。奈良時代の木彫仏は32体が現存しているが、これだけの大きさの仏は3ヶ所しかない。如意輪観世音菩薩と伝えられるが、実際は何観音かはわからない。本堂:修理したとき徳川4代将軍の家綱の棟札が出てきた。全国にお寺を建てて自分の病気を直そうとしたのだろう。鐘楼:大阪の天満宮から移築されたもので元は相撲場だった。摩崖梵字岩:13世紀頃のもので全国でも10数例しかない貴重なもの。再度山頂:14世紀に赤松氏が楠木軍を監視するために砦を築いたことが太平記に記されている。亀の岩:山頂のすぐ下にある。亀が海を見渡している感じがする。岩の上には空海作といわれる20cmくらいの亀が置いてある。
再度山にはいろいろな古いものが現存している。古い文化財を将来に向かって残していきたい。
■お勧め!4つの健康法
健康で過ごすためには4つのことをしてください。①おいしい空気を吸う:木がおいしい空気をつくってくれる。私はおいしい空気を吸っているので皆さんより長生きするかもしれない。②太陽を浴びる:人間が太陽を浴びることは大切なこと。③土を踏む:コンクリートの衝撃でイライラして、キレるのかもしれない。昔は頭が切れると偉いね、と言ったものだが。④おいしいお水を飲む:おいしいお水を飲んで代謝をよくすることができる。その4つをすることによって死ぬまで生きれるのは間違いない。確実ですので、実行してください。
■200人の子どもたちに教誨
私は加古川少年院にお話に行かせていただいている。院には殺人、強盗、覚せい剤、強姦などの罪を犯した少年たちがいる。10人中3人は出所しても少年院に帰ってくる。そうした一番の問題は家庭やご両親にあるようだ。あんなところには「帰りたくない」という子が多い。家庭内で見守るのが大切なことだと思う。彼らは話をしっかり聞いてはくれるが、それが実を結ぶこともあれば、悔いが残ることもある。しっかり指導していきたいと思っている。
まとめ(井上さん)
以前、新聞に「腹立てば 鏡を出して顔を見よ 鬼の姿がタダで見られる」という川柳が載っていました。仏様の心が全部表れている川柳です。いつも優しいまなざしで、人を見る、なごやかな顔をする、優しい言葉でお話をする。それによって皆さんに好かれることであろうと。これを「和顔愛語」といいます。ぜひとも実践してください。恵比須顔も大切なことです。
事務局より
参加者の皆さんは、伝統のある大龍寺についてどんなお話が聞けるのか、様々な興味を抱かれたと思います。平易で親しみやすく多岐にわたるお話をしていただきました。いつの間にか、大龍寺の自然の中の暮らしぶりに馴染んだ一時でした。
六甲山を活用する会事務局
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