第74回 六甲山の森林植生と土壌
自然保護センターの周辺を歩きながら、六甲山の森林の植生・植物を観察しつつ、それらを支える土壌についてお話しします。(小舘)
小舘さんは、院生時代から六甲山の植生と土壌の関係を調べておられます。はげ山から再生した再度山の変化をとらえる、永久方形区での5年毎に行われる調査にも参加されています。六甲山の土壌や植生の特徴を理解して、六甲山の森林保全などに対する見識も深めていただけます。
| 開催日時 | 2009年5月16日(土) 13:00 |
|---|---|
| 会場 | 六甲山自然保護センター |
| 講師 | 小舘 誓治(兵庫県立人と自然の博物館 研究員) |
| 詳細 | 案内チラシPDF 報告書抜粋PDF |
「六甲山を活用する会」に改称して心機一転!
5月も半ばですが、ときおり雨がぱらつき肌寒い日でした。自然保護センターではストーブで暖をとりました。
午前中は第7回目の総会を開催しました。会の名称を「六甲山を活用する会」に変更することになりました。自然保護センターだけにとらわれず、六甲山全体を視野に入れた活動を展開します。会員から「名前が大きすぎるのでは?」という声もありましたが、名前に即した意義深い活動を続けていきます。
野外観察で土壌の違いを体感しました
市民セミナーには、人と自然の博物館の研究員・小舘さんに六甲山の植生と土壌についてお話しいただきました。
自然保護センターでは、植生と土壌についてポイントを解説されて、屋外で実地の解説をしていただきました。
近畿自然歩道の散策路を歩いて周辺の植物を観察し、植生や土壌について分かりやすくお話されました。スノキの葉を食べたり、土壌の違いを触って比べたりと、現物に触れる体験ができ、参加者には大変好評でした。
土壌は岩石の風化物と有機物が混合したもの
六甲山は多様な環境があるものの、林は手入れされず、単一の植物が優占して単調な植生のところが多いとのことです。土壌は岩石の風化物と有機物の腐朽生成物が混合してできたもので、粒子の大きさによって「礫」や「粘土」に名前が変わります。六甲山の表面の地質は「六甲花崗岩」と「布引花崗閃緑岩」があり、堆積岩質の土壌の「神戸層群」という地層もあります。
野外では、散策路脇の林はアセビやササが優占し、他の植物が出てこられないと解説されました。検土杖や土壌硬度計といった器具をつかって土壌調査の実演をしていただきました。尾根と谷では環境が大きく異なり、土壌も変わることが分かりました。
六甲山に多様性ある植生を取り戻したい
小舘さんは散策路脇のアセビやササを切ると、新たな植物が芽生える可能性があると話されました。六甲山では林の手入れがされずにアセビやササがはびこっている場所が数多くあります。私たちが進める環境整備活動にも後押しをいただき勇気づけられました。
講演内容
講演の挨拶(小舘 誓治さん)
人と自然の博物館の小舘です。六甲山の森林植生と土壌についてお話します。市民セミナーでは植生については色んなお話がされていますので、土壌の方を中心に話します。今日は、部屋ではポイントだけお話しして、野外での時間を長く取りたいと思います。
1.六甲山の森林植生・地質と土壌の基礎知識
■様々な環境を持つ六甲山
航空写真を見ると、六甲山は全体が緑に覆われている。市街地に隣接した900m級の山。瀬戸内は一般的に温暖少雨が特徴だが、六甲山は標高が上がるほど雨が多くなり、山頂では年間約2000mmの降水量がある。気温も麓より6度近く下がる。気候的に多様で、昔から人の土地利用も様々あっただろうと思われる。
■六甲山の主な森林植生
森林植生は「自然林」「二次林」「人工林」と大きく分ける。自然林には、あまり人の手が入っていないブナ林やシイ林、ウラジロガシ林などがある。二次林はかつて里山と言われた中の、農用林にあたる。元の植生とは変わっていて、何度も再生されてきた林で「代償植生」ともいわれる。人工林は人が植栽して、手入れをしている樹林。スギ林やヒノキ林などがある。
アカマツ林:尾根や斜面上部に残っているが、松枯れが発生してだいぶ枯れている。
コナラ林:ササや常緑樹で林内が覆われると、林床に光が入らず、色んな植物が生えなくなる。
スギ林:手入れが悪くて林内が暗い。
六甲山の植生で特徴的なのは、ツツジ科の植物が多く見られること。約20種類を見ることができる。
■土壌は風化物と有機物でできている
土壌とは岩石の風化物と動植物の腐朽生成物が混合してできたもの。動植物の腐朽生成物は土粒子間の接着剤としての団子―「団粒」をつくり、吸着剤の役割を持つ。岩石の風化物は主に土壌の骨格としての役割を持つ。土壌は色々な影響を受けて土壌になる。地質や地形・気候・生物・人為の影響・時間の経過などが土壌生成因子となって、土壌がつくられていく。
土壌は粒子の大きさによって役割や機能が大きく変わる。粒の直径が2mm以上のものは「礫」と呼ぶ。2mm未満を小さくなるに従って「粗砂」「細砂」「微砂」と呼び、0.002mmより小さいものは「粘土」と呼ぶ。粘土は重要な存在で、表面積が大きいので色んなものを吸着させて、反応させやすくする。
■六甲山の地質
表層の地質は「六甲花崗岩」と「布引花崗閃緑岩」に分けられる。六甲花崗岩の方がピンク色がかって見えるのが特徴。再度山付近では六甲花崗岩と布引花崗閃緑岩の両方が近くで見られる。
花崗岩で風化したものは粒が大きい。地下深いところでマグマが冷えて、じっくり結晶化して岩石ができてためで、風化したときには大きな粒になり、砂っぽくなる。
再度山付近の山道では円礫(えんれき)―まるい礫が見られることがある。川などで流されて丸くなった石で、「神戸層群」という堆積岩質の土壌で見られる。花崗岩質と堆積岩質の土壌は対照的で、花崗岩質は粒が大きいので水はけが良いが、水持ちが悪い。堆積岩質は粒が小さいので、水持ちが良いが、水はけは悪くなる。
2.森林を構成している植物
■アセビとササで覆われ他の植物が出られない
散策路の法面はササを刈っているので色んな植物が生えていると思うが、林内はミヤコザサで一面が覆われている。地表は日が当たらず、ササの地下茎が土壌中に張り巡らされているので他の植物がほとんど生えない。ササより高いところはアセビが優占している。ツツジ科の植物は背一杯背伸びをして、光を浴びようとしている。アセビなどの常緑の緑を伐採すれば、他の種類も入ってくる余地があるだろう。
■野外観察で見つけた植物(一部)
アセビ:「馬酔木」と書く。アルカロイド系の成分が葉に含まれ、馬が食べると酔ったように歩くというのが由来といわれる。
スノキ:葉にシュウ酸が入っているので酸っぱい味がする。葉で10円玉を擦るとピカピカになる。
チゴユリ:ユリの仲間で、オシベやメシベ、花ビラの枚数などが3の倍数で構成される。
3.森林土壌の特徴
■土壌調査器具の実演
検土杖:土を掘らずに土壌調査ができる道具。溝が彫ってある。土の中に刺して回転させ、引き抜くと、土を掘らずに土壌を採取し観察できる。
山中式土壌硬度計:土壌面に当てて一定の速度で突き刺していくと、土壌の硬さが分かる。
■谷と尾根の土壌の違い
谷で検土杖をさして土壌を採取すると、厚さが約50cmあり、土層の色が3つに分かれていた。各土層の境が明確なことから、水の上下移動が少ないことが分かる。尾根では、検土杖が深く刺さらない(厚さが約20cm)。大雨の時、水はすぐに地表にあふれ、細かい粒子や落ち葉を斜面下方に流亡させてしまう。
質疑応答
クスノキ林も自然林の仲間?:
九州のほうでは自然林として存在するが、六甲山には元々なかっただろうと思う。植林か、植林から増えたものだろう。
どの様にして柔らかい土になっていくのか?:
有機物が分解されると暗い色の腐植になります。自然土壌は人間が耕さない代わりに土壌動物等が掘り返すなどして、腐植が混じって柔らかくなって行きます。
まとめ(小舘さん)
六甲山は色んな植物や生き物がいて、色んな土壌がある面白いところです。今まで市民セミナーでは多くの方が植生についてお話になっています。今回は土壌の話でしたが、説明するのは植物の方が面白いので、ついつい植物の方の話をしてしまいます。(笑)土壌でセミナーをやるとほとんど人が来ないんです。来週も六甲山で(植物の)セミナーをやりますので、もしよかったら参加して下さい。
事務局より
約90分にわたって野外で解説をしていただきました。地表の環境が違えば、地中の土壌も変わることを知りました。散策路は数年間、毎月歩いて知ったような気でいましたが、まだまだ知らないことがあることに気づかされました。
六甲山を活用する会事務局
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