第84回 六甲にもいる ヒメボタル
ヒメボタル、漢字で書くと「姫螢」という可愛らしいホタルをご存知でしょうか。ホタルというときれいな川に住んでいて…というイメージがあるかと思いますが、このホタルは森の中で暮らしています。まだまだ謎の多い彼らの生態を、日本の他のホタルの話も交えてご紹介します。(安岡)
六甲山・記念碑台近くの近畿自然歩道にヒメボタルが生息しています。初夏の深夜に、小さな光が点滅するのを目にすると、「二つ池」周辺の自然環境の魅力をしみじみ感じます。新進の研究者の安岡さんに、ヒメボタルの生態の解明を大いに期待しています。
会場は六甲山地域福祉センターです。ご注意下さい。
| 開催日時 | 2010年3月20日(土) 13:00 |
|---|---|
| 会場 | 神戸市立六甲山地域福祉センター |
| 講師 | 安岡 拓郎(神戸大学大学院 農学研究科) |
| 詳細 | 案内チラシPDF 報告書抜粋PDF |
六甲山は春の陽気
午前10時の六甲山上は晴れたり曇ったりで、気温は12℃以上と温かく、近畿自然歩道沿いでは満開のアセビの花も目にしました。講演会場の六甲山地域福祉センターでは、お世話になっていたストーブにもお
休みいただきました。
ヒメボタルの不思議に魅せられた安岡さん
講師の安岡 拓郎さんは神戸大学の大学院生(博士課程後期)です。市民セミナーの講師としては最年少で、若手の昆虫研究者にご登場いただき今後の楽しみが増えました。
学部生時代に研究室のOBである県立人と自然の博物館の主任研究員の八木 剛さんに出会ったのが、ヒメボタルの研究を始めたきっかけで、生態がよくわからないことに探求心が刺激されたとのことです。NPO法人「こどもとむしの会」にも加わっておられて、週末は佐用町昆虫館のボランティア活動にも注力されています。
わかりやすいホタルの解説に一同が感心
講演の参加者は17名と少人数でしたが、活発な質問が飛び交いました。
ホタルについての理解を深めて、ヒメボタルの観察に興味を強めるようになりました。ホタルの標本箱などを携え、非常にわかりやすいパワーポイントも準備されて、用意周到でした。よく知られているゲンジボタルやヘイケボタルは水辺に生息しているのに対して、ヒメボタルは森や草原に棲んでいるという違いを話されました。清流に棲むホタルというイメージを覆された人も多かったようです。
続いて、ヒメボタルの「金ボタル」と呼ばれる発光など、解明されていない生態の特徴について説明されました。研究テーマの発光時間帯について、発光時間の早い種類と遅い種類を全国地図で示された分布などに、驚きの声が上がりました。
六甲山にいる7種類のホタルや、ヒメボタルの観察会についての案内もされました。六甲山などでのヒメボタルの観察・調査を身近に感じて、興味を高める機会になりました。
六甲山のヒメボタルの生態を観察したい
「大学入学までホタルを見たことがなかった」という安岡さんが、ヒメボタルの生態解明に地道な観察を続けられていることに敬服しました。六甲山でのヒメボタルの観察・調査にご協力いただき、環境学習の定番メニューにしたいと思いました。
講演内容
講演の挨拶(安岡 拓郎さん)
ヒメボタルをご覧になったことがありますか?ヒメボタルは、ゲンジボタルやヘイケボタルなどとは違った生態を持っています。
1.六甲山にもいる 森のホタル「姫螢」
■ゲンジボタルやヘイケボタル
ゲンジボタルは川辺に棲む。清流を好むイメージがあるが、実際は生活排水がちょっと流れ込んでいるような川が好き。
ヘイケボタルは田んぼや湿地に棲む。田んぼの用水路がコンクリート張りになって、減ってきている。ゲンジボタルやヘイケボタルは糸をひくように、ゆっくり点滅しながら飛ぶ。
■ヒメボタルは森のホタル
ヒメボタルは森や草原に棲んでいる。光り方は、カメラのフラッシュのように鋭い。光の色は黄色で、岡山県のある地方では「金ボタル」と呼ばれる。北は青森から南は鹿児島まで生息する。
オスは飛べるがメスは飛べない。大きくても体長は1㎝程度しかない。日本にしかいない。幼虫も陸の上で暮らす。
■一生のほとんどを幼虫として過ごす
ヒメボタルの一生ははっきりしない。成虫は1~2週間の間に交尾し、死んでしまう。卵が孵るのに2~3週間かかる。幼虫から成虫になるまで1~3年程度かかると考えられている。土の中に部屋をつくって蛹になる。
一生のうち、成虫の時期はほんのわずかで、大部分はモゾモゾ動く幼虫として暮らす。
■いろんなところにいるが、どこにでもはいない
一番よく見られるのがブナ林などの落葉広葉樹林。照葉樹林や人工のスギ林でも見られる。鎮守の森で見られることも多い。スキー場や人里の中の竹林、住宅街の裏にある草地でも出現する。
いろんなところにいるが、どこにでもはいないという虫。どんなところが好きなのかはあまり分からない。
■成虫が光るホタルは珍しい
日本のホタルはカブトムシやテントウムシと同じ「甲虫目」に分類される。ホタルの仲間は日本に約50種類、世界では2000種類いる。ほとんどが熱帯・亜熱帯地域にいる。日本の40種類も奄美大島以南で見つかっている。
世界のホタルのうち、99%は一生陸の上で暮らし、幼虫のときだけ光るホタルが圧倒的に多い。幼虫が水中で暮らすゲンジボタルやヘイケボタルは世界的には珍しい。幼虫が光る理由は、捕食者に対して危険性をアピールしているという説があるがはっきりは分からない。
2.ヒメボタルの不思議
■餌の不思議
ゲンジボタルはカワニナを餌にすることが知られている。ヒメボタルもカタツムリなどの陸貝を食べることが昔から確認されていた。
しかし、ヒメボタルの生息地には貝が見つからない場所もあり、餌が何なのか議論されている。幼虫を1年以上飼育して調査した結果、ミミズやワラジムシでも育つことが分かった。
■発光する時間帯の不思議
ヒメボタルの発光する時間帯は日没直後から深夜まで様々で、2~30kmしか離れていない場所でも全く違う。なぜ違うのか分からない。気温や湿度などの外的要因とは関係が無いようだ。体内時計の違いが理由かもしれないと考えている。
■体のサイズの不思議
同じヒメボタルでも、体の大きさや幼虫の色にバリエーションがある。蒜山や夢前のホタルに比べて、豊中や川西は倍ほどもある。幼虫の体色は山の中にいるのは赤く、吹田や池田にいるのは黒い。信州や東北に行くと、さらに違った色のホタルがいる。
「ヒメボタル」と呼んでいる虫が本当に1種類の虫なのか疑問がある。
3.六甲山で見るヒメボタル
■六甲山には7種類のホタルがいる
日本ホタル50種類のうち、本州には10種類いる。うち7種類が六甲山で見られる。
ゲンジボタル、ヘイケボタル、ヒメボタル、クロマドボタル、オバボタル、ムネクリイロボタル、カタモンミナミボタルがいる。7種類のうち光るのは3種類。一番遭遇率が高いのはクロマドボタルの幼虫。
■ホタル観察の鉄則
①明るいうちに現場を歩く:日中に危険な場所を確認しておく。夜の森を歩くのは危ない。周囲の環境とともに楽しみたい。
②車から降りて歩いてみる:車の中からだとヒメボタルがいても見落とすことが多い。
③マナーを守る:ヒメボタルは人の住んでいるすぐ近くにもいる。懐中電灯をつけたままではホタルの光は見えない。
■一晩明かせば確実に出逢える!?
六甲山ではイノシシが出ることが多い。夜は凶暴な場合があるので、なるべく複数名で観察した方がよい。
紅葉谷周辺では例年7月1~2週目に一番多く見られ、深夜1~2時頃に最も発光する。時間帯は前日の天候により変わることもあるので、確実なのは日没から朝まで待機しておくこと(笑)。時期は多少雨が降っていても飛ぶが、濃霧だと出ないときがある。
■観察会が各所で開かれている
池田や伊丹・吹田では5月に小規模な観察会が開かれている。丹波市の山南町では、6月中頃にヒメボタル祭りが毎週開催される。駅からバスでスポットに連れていってくれる。ハチ北高原では7月中旬~下旬に見られる。ここで紹介したのはいずれも早い時間帯に光るので訪れやすい。
質疑応答
ホタルの研究のきっかけは?:大学入学までホタルを見たことがなかった。人気があるのに、分からない事だらけで、みんな見ているけど何も見えてないのが面白いと思った。
ヒメボタルを人里の近くに生息させられる?:
ヒメボタルの移植はほとんど失敗している。虫がいないところには、虫が住めないと考えた方がいいだろう。
ホタルの研究者の数は?:大学では全国に2、3の研究室があるが、ホタルは寿命が1~2年と長いのであまり研究対象にならないようだ。
まとめ(安岡さん)
ヒメボタルに興味を持たれた方がいらっしゃれば、その目でヒメボタルを確かめてください。生き物が周囲の環境の中、光っていることを楽しんで下さい。さらに興味をもっていただければ、どんなところにいたか教えて欲しいと思います。
事務局より
ロマンチックな響きのあるヒメボタル。先端の若手の研究家に、わかりやすく丁寧にお話いただきました。今日のお話を参考に、「六甲山のヒメボタル」を環境調査や環境学習の定番メニューにしていきたいと思います。
六甲山を活用する会事務局
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