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市民セミナー報告書より

午前中は雨、ストーブで暖をとる

天気予報では六甲山は曇り空で、午後から雨が降るという予想でした。午前中の環境整備ボランティア活動には長岡講師を含む8名が参加し、雨具を持たずに二つ池周辺の雑木林を踏査しました。突然、雨が降り出し濡れねずみなって、自然保護センターに戻りました。石油ストーブのもてなしを受けて、暖かさが身に染み、六甲山では雨具は必携と肝に銘じました。

里山整備活動の先覚者

長岡さんは30年以上も前から大阪自然環境保全協会で活動され、里山の保全活動や指導者・実践者の育成に取り組んで来られました。1999年に櫻守の会を設立、水上勉氏の小説『櫻守』の主人公、故笹部新太郎氏の偉業である「桜の園」の再興に尽力されています。宝塚市の5カ所で里山整備活動を進め、県内では代表的な里山づくりを先導されています。
ある日阪急仁川駅前で、通りかかった幼稚園児たちが「長岡さん!」と寄って来る。近くの幼稚園も支援され、子ども達にも親まれている方です。10月4日(社)「国土緑化推進機構」主催の平成21年度全国育樹活動コンクールで理事長賞受賞、長崎県での全国育樹祭の授賞式に参加。

『櫻守たちの一年』で里山づくりに感激しきり

講演では出来上がったばかりの「桜の園」のパンフレットを配付され、2種のパワーポイントなどで櫻守の会や里山づくりの活動の実際を詳しく説明していただきました。桜の園での四季の活動を紹介したVTR『櫻守たちの一年』を放映し、絶妙のコメントも加えていただきました。息の長い里山づくりを40分足らずで鑑賞した参加者は感激の声をあげていました。
急な斜面での樹木の伐採、観察路の整備、安全管理、桜の植樹などの実践活動。里山入門講座の開催、中学の「トライやる」、小学生の森林体験講座など、後継者育成につながる活動などを理解し関心を深めました。

市民のボランティア活動は課題も大きい

講座生でも1割しか残らない、手弁当の奉仕では続けていけないなど、市民ボランティアが抱える課題も指摘された。世の中の役に立つ活動がゆえに、いかに継続するかを腐心することが主催者の役目になっています。

講演内容

講演の挨拶(長岡 一夫さん)

櫻守の会の長岡と申します。櫻守の会は亦楽山荘(えきらくさんそう)というところで旗揚げして、今年11年目を迎えました。

1.櫻守の会の活動と沿革

■桜博士が愛した「桜の園」で旗揚げ

宝塚市にある桜の園「亦楽山荘」は、桜博士として知られる笹部新太郎氏の桜の演習林だった。氏の没後、地元で整備されたが続かず、放置され荒廃した。1999年4月に市の里山自然公園となり、桜の園を愛し、自然に親しみながら整備・管理するボランティアグループの「櫻守の会」を設立した。

■廃線のトンネルを抜けると亦楽山荘がある

亦楽山荘へはJR福知山線の武田尾駅から、廃線跡を2km弱くだり、トンネルを2つ抜けたところに入口がある。ここには桜が植えられ、人々の憩いの場になっている。秋には紅葉も楽しめる。亦楽山荘にはイノシシや、サル、ウサギも出てくる。

■宝塚の5箇所を拠点に活動している

活動地域は桜の園の他、山手台南公園、井植山荘、武庫山の森、ゆずり葉の森の計5箇所ある。武庫山の森とゆずり葉の森は六甲山系グリーンベルト整備事業の対象地域になっている。
会員は242名で約100名が活動に参加、市民は約2/3、殆どが60歳以上。定例活動で
は、月8回の里山活動、月1回の親子森づくり体験を開催、他に会員向け勉強会、自然観察会、バス研修ツアー、懇親会、他団体との交流、ガイド依頼、小学校の総合学習支援も行う。

■中学・小学校・幼稚園児の自然体験教育

活動地内ゆずり葉の森での親子森づくり体験:小中幼を対象に自然観察、整備活動、植樹、自然遊び等、10月で第75回を開催。宝塚市からの参加だけでなく、近郊からの親子参加も増え、半数になる事も多い。
中学2年生:トライやる活動や森林体験ボランティア事業:平成18年から北県民局林務課支援で小学校へのバス代援助始まり、受託事業を受ける。
兵庫県下:全小学校3年生の自然体験学習:平成21年度から始まる県教育行事で、校区内の逆瀬台小学校は森林環境教育、里山の自然観察、整備体験、植樹、シイタケ栽培を支援している。

2.桜の園の四季

VTR「櫻守たちの一年2002年」を鑑賞
櫻守の会の1年間の活動を追ったVTRを見せていただきました。

3.里山つくりの担い手

■次世代の担い手作りが課題

活動団体の維持・管理はボランティア頼みになっているが、そんなことばかりは言ってられない。担い手は退職者がほとんどで、就職中の人は来られない。次世代を育てるべく、子供向けの講座を用意している。参加しても実際に山に入ってくるのは1割程度。会員は一般に募集してもなかなか入ってくれない。案外入会される方は、口コミ(活動内容がよくわかる)で体験参加される方の歩留まりが良い。

■資金の確保が活動団体の悩みの種

櫻守の会と同様の活動団体には任意団体やNPO法人などいろいろな組織形態がある。行政が支援している組織は、下請け部隊になってしまう場合がある。行政・各支援団体からは行事の経費援助は出来るが、団体運営費は難しく、不足は団体支出で行う事になる。
しかし、各団体も支援金を活動資金として活用させて頂き継続活動が出来ている。活動資金以上の活動する場合に、如何に資金が得られるか、事務局が一番苦労する。企業が運営団体の場合は、会運営に余裕がある場合もあるが、行政・企業から会運営費の援助があれば、ボランティア活動も飛躍的に拡大すると考える。

■ボランティア活動だけでは、会の運営は難しい

活動団体の目的は里山整備活動、地域交流、学校教育の援助などがある。今の学校教育は遅れすぎている。体験講座も受け皿がないので櫻守の会ではできる限り受けている。
活動参加者への援助配慮が中々難しい。個人的にはボランティア活動を有償か無償かとの意見があるが、活動回数が増えると参加者の負担が増える。各ボランティア団体が行事への援助参加者へ参加経費が支払える運営が出来れば、益々ボランティア活動が広がり、団体が増加すると思う。

■安全確保の重要性

木を切り倒すとき、大きな木はチルホールという機械を使ってワイヤーを張る。伐採にはチェーンソーは使わない。チェーンが切れたら死と直結する。
草刈にはナイロンワイヤー式の草刈機を使う。草刈に熱中すると後
ろの人に注意が向かなくなるので、注意が必要だ。

■整備活動は成果が直ぐに見える

 木が密生して暗い場所を整備すると直ぐに明るく成る。倒した人に「2m四方に名前を書いてぶら下げていい」と冗談を言っているが、効果が直ぐ見え、そん喜びも参加の理由付けの一つでもある。
 過去に、他で主催する団体の活動地で2本並んでいた素性の良い木の、1本を勝手な持論で間伐し、地主さんとトラブルになったことがある。自己流で作業されると、主催者は責任が持てない。地主さんが自由に使ってと言われても、山への思いはかなり差が有り、勝手には出来ない。特に人工林の間伐には、確認・指導してもらう必要がある。成果を急がず、各自が出来る範囲で活動をし、時間をかけて整備活動を続ける必要がある。

まとめ(長岡さん)

子供向けの講座は、子供たちへの教育のためですが、長い目で見れば、そのうちに会に参加してもらいたいという意図もあります。会は退職した人が中心ですが、現役の人にも参加してほしいです。私は、30代の終わりから里山の活動をはじめました。活動はストレス解消に最適です。企業内で募集して参加できる体制をつくれば現役の人たちも参加するようになります。現役の方の参加もどんどん増やしたいと思います。

事務局より

長岡さんは午前のボランティア活動にも参加されました。当会が構想している目標景観の設計や整備活動について貴重な助言をいただきました。